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今ではいつの頃だったか覚えてはいませんが秋だったのでしょう。 葡萄(ぶどう)の実が熟していたのですから。 天気は冬が来る前の秋によくあるように空の奥の奥まで見すかされそうに霽(は)れわたった日でした。 僕達は先生と一緒に弁当をたべましたが、その楽しみな弁当の最中でも僕の心はなんだか落着かないで、その日の空とはうらはらに暗かったのです。 僕は自分一人で考えこんでいました。 誰かが気がついて見たら、顔も屹度青かったかも知れません。 僕はジムの絵具がほしくってほしくってたまらなくなってしまったのです。 胸が痛むほどほしくなってしまったのです。 ジムは僕の胸の中で考えていることを知っているにちがいないと思って、そっとその顔を見ると、ジムはなんにも知らないように、面白そうに笑ったりして、わきに坐(すわ)っている生徒と話をしているのです。 でもその笑っているのが僕のことを知っていて笑っているようにも思えるし、何か話をしているのが、「いまに見ろ、あの日本人が僕の絵具を取るにちがいないから。」といっているようにも思えるのです。 僕はいやな気持ちになりました。
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