ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2021-06-10

二銭銅貨(10/30)

(657字。目安の読了時間:2分)

 ある日のこと、いい心持に※(ゆだ)って、銭湯から帰って来た私が、傷だらけの、毀れかかった一閑張の机の前に、ドッカと坐った時、一人残っていた松村武が、妙な、一種の興奮した様な顔付を以て、私にこんなことを聞いたのである。 「君、この、僕の机の上に二銭銅貨をのせて置いたのは君だろう。あれは、どこから持って来たのだ」 「アア、俺だよ。さっき煙草を買ったおつりさ」 「どこの煙草屋だ」 「飯屋の隣の、あの婆さんのいる不景気なうちさ」 「フーム、そうか」  と、どういう訳か、松村はひどく考え込んだのである。 そして、尚も執拗にその二銭銅貨について尋ねるのであった。 「君、その時、君が煙草を買った時だ、誰か外にお客はいなかったかい」 「確か、いなかった様だ。そうだ。いる筈がない。その時あの婆さんは居眠りをしていたんだ」  この答を聞いて、松村は何か安心した様子であった。 「だが、あの煙草屋には、あの婆さんの外に、どんな連中がいるんだろう。君は知らないかい」 「俺は、あの婆さんとは仲よしなんだ。あの不景気な仏頂面が、俺のアブノーマルな嗜好に適したという訳でね。だから、俺は相当あの煙草屋については詳しいんだ。あそこには婆さんの外に、婆さんよりはもっと不景気な爺(じい)さんがいる切りだ。併し君はそんなことを聞いてどうしようというのだ。どうかしたんじゃないかい」 「マアいい。一寸訳があるんだ。ところで君が詳しいというのなら、も少しあの煙草屋のことを話さないか」

「ウン、話してもいい。

========================= ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!  https://bit.ly/2Twaeh9

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56647_58167.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ■月末まで一時的に配信を停止: https://bungomail.com/unsubscribe


配信元: ブンゴウメール編集部 NOT SO BAD, LLC. Web: https://bungomail.com 配信停止:[unsubscribe]

公式サイト

ブンゴウメール

ブンゴウメール

1日3分のメールでムリせず毎月1冊本が読める、忙しいあなたのための読書サポートサービス

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチは、青空文庫の作品を目安の読了時間で検索できるサービスです。