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ほとんど虚無の情熱だと思いました。 それが、その時の私の空虚な気分にぴったり合ってしまったのです。 私は局員たちを相手にキャッチボールをはじめました。 へとへとになるまで続けると、何か脱皮に似た爽やかさが感ぜられ、これだと思ったとたんに、やはりあのトカトントンが聞えるのです。 あのトカトントンの音は、虚無の情熱をさえ打ち倒します。 もう、この頃では、あのトカトントンが、いよいよ頻繁に聞え、新聞をひろげて、新憲法を一条一条熟読しようとすると、トカトントン、局の人事に就いて伯父から相談を掛けられ、名案がふっと胸に浮んでも、トカトントン、あなたの小説を読もうとしても、トカトントン、こないだこの部落に火事があって起きて火事場に駈けつけようとして、トカトントン、伯父のお相手で、晩ごはんの時お酒を飲んで、も少し飲んでみようかと思って、トカトントン、もう気が狂ってしまっているのではなかろうかと思って、これもトカトントン、自殺を考え、トカトントン。 「人生というのは、一口に言ったら、なんですか」
と私は昨夜、伯父の晩酌の相手をしながら、ふざけた口調で尋ねてみました。
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