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…の指の股を蛙(かえる)の手のようにひろげ、空気を掻き分けて進むというような奇妙な腕の振り工合で、そうしてまっぱだかにパンツ一つ、もちろん裸足で、大きい胸を高く突き上げ、苦悶の表情よろしく首をそらして左右にうごかし、よたよたよたと走って局の前まで来て、ううんと一声唸(うな)って倒れ、 「ようし! 頑張ったぞ!」と附添の者が叫んで、それを抱き上げ、私の見ている窓の下に連れて来て、用意の手桶の水を、ざぶりとその選手にぶっかけ、選手はほとんど半死半生の危険な状態のようにも見え、顔は真蒼でぐたりとなって寝ている、その姿を眺めて私は、実に異様な感激に襲われたのです。 可憐、などと二十六歳の私が言うのも思い上っているようですが、いじらしさ、と言えばいいか、とにかく、力の浪費もここまで来ると、見事なものだと思いました。 このひとたちが、一等をとったって二等をとったって、世間はそれにほとんど興味を感じないのに、それでも生命懸けで、ラストヘビーなんかやっているのです。
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