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あたし、あなたに、誤解されてやしないかと思って、あなたに一こと言いたくって、それできょうね、思い切って」 その時、実際ちかくの小屋から、トカトントンという釘打つ音が聞えたのです。 この時の音は、私の幻聴ではなかったのです。 海岸の佐々木さんの納屋で、事実、音高く釘を打ちはじめたのです。 トカトントン、トントントカトン、とさかんに打ちます。 私は、身ぶるいして立ち上りました。 「わかりました。誰にも言いません。」花江さんのすぐうしろに、かなり多量の犬の糞(ふん)があるのをそのとき見つけて、よっぽどそれを花江さんに注意してやろうかと思いました。 波は、だるそうにうねって、きたない帆をかけた船が、岸のすぐ近くをよろよろと、とおって行きます。 「それじゃ、失敬」 空々漠々たるものでした。 貯金がどうだって、俺の知った事か。 もともと他人なんだ。 ひとのおもちゃになったって、どうなったって、ちっともそれは俺に関係した事じゃない。 ばかばかしい。 腹がへった。 それからも、花江さんは相変らず、一週間か十日目くらいに、お金を持って来て貯金して、もういまでは何千円かの額になっていますが、私には少しも興味がありません。
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