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花江さんがさきに、それから五、六歩はなれて私が、ゆっくり海のほうへ歩いて行きました。 そうして、それくらい離れて歩いているのに、二人の歩調が、いつのまにか、ぴったり合ってしまって、困りました。 曇天で、風が少しあって、海岸には砂ほこりが立っていました。 「ここが、いいわ」 岸にあがっている大きい漁船と漁船のあいだに花江さんは、はいって行って、そうして砂地に腰をおろしました。 「いらっしゃい。坐ると風が当らなくて、あたたかいわ」 私は花江さんが両脚を前に投げ出して坐っている個所から、二メートルくらい離れたところに腰をおろしました。 「呼び出したりして、ごめんなさいね。でも、あたし、あなたに一こと言わずには居られないのよ。あたしの貯金の事、ね、へんに思っていらっしゃるんでしょう?」 私も、ここだと思い、しゃがれた声で答えました。 「へんに、思っています。」 「そう思うのが当然ね」と言って花江さんは、うつむき、はだかの脚に砂を掬(すく)って振りかけながら、「あれはね、あたしのお金じゃないのよ。
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