(483字。目安の読了時間:1分)
まさか、いい旦那がついたから、とも思いませんが、私は花江さんの通帳に弐百円とか参百円とかのハンコを押すたんびに、なんだか胸がどきどきして顔があからむのです。 そうして次第に私は苦しくなりました。 花江さんは決して凄腕なんかじゃないんだけれども、しかし、この部落の人たちはみんな花江さんをねらって、お金なんかをやって、そうして、花江さんをダメにしてしまうのではなかろうか。 きっとそうだ、と思うと、ぎょっとして夜中に床からむっくり起き上った事さえありました。 けれども花江さんは、やっぱり一週間にいちどくらいの割で、平気でお金を持って来ます。 いまはもう、胸がどきどきして顔が赤らむどころか、あんまり苦しくて顔が蒼(あお)くなり額に油汗のにじみ出るような気持で、花江さんの取り澄まして差出す証紙を貼った汚い十円紙幣を一枚二枚と数えながら、矢庭に全部ひき裂いてしまいたい発作に襲われた事が何度あったか知れません。 そうして私は、花江さんに一こと言ってやりたかった。 あの、れいの鏡花の小説に出て来る有名な、せりふ、「死んでも、ひとのおもちゃになるな!」
========================= ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://bit.ly/3xvdTeB
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/2285_15077.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ■月末まで一時的に配信を停止: https://bungomail.com/unsubscribe
配信元: ブンゴウメール編集部 NOT SO BAD, LLC. Web: https://bungomail.com 配信停止:[unsubscribe]