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俺やお前のように、頭の悪い男は、むずかしい事を考えないようにするのがいいのだ」と言って笑い、私も苦笑しました。 この伯父は専門学校を出た筈(はず)の男ですが、さっぱりどこにもインテリらしい面影が無いんです。 そうしてそれから、(私の文章には、ずいぶん、そうしてそれからが多いでしょう? これもやはり頭の悪い男の文章の特色でしょうかしら。自分でも大いに気になるのですが、でも、つい自然に出てしまうので、泣寝入りです)そうしてそれから、私は、コイをはじめたのです。 お笑いになってはいけません。 いや、笑われたって、どう仕様も無いんです。 金魚鉢のメダカが、鉢の底から二寸くらいの個所にうかんで、じっと静止して、そうしておのずから身ごもっているように、私も、ぼんやり暮しながら、いつとはなしに、どうやら、羞ずかしい恋をはじめていたのでした。 恋をはじめると、とても音楽が身にしみて来ますね。 あれがコイのヤマイの一ばんたしかな兆候だと思います。 片恋なんです。 でも私は、その女のひとを好きで好きで仕方が無いんです。
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