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…書くにあたり、オネーギンの終章のような、あんなふうの華やかな悲しみの結び方にしようか、それともゴーゴリの「喧嘩噺(けんかばなし)」式の絶望の終局にしようか、などひどい興奮でわくわくしながら、銭湯の高い天井からぶらさがっている裸電球の光を見上げた時、トカトントン、と遠くからあの金槌の音が聞えたのです。 とたんに、さっと浪がひいて、私はただ薄暗い湯槽の隅で、じゃぼじゃぼお湯を掻(か)きまわして動いている一個の裸形の男に過ぎなくなりました。 まことにつまらない思いで、湯槽から這(は)い上って、足の裏の垢(あか)など、落して銭湯の他の客たちの配給の話などに耳を傾けていました。 プウシキンもゴーゴリも、それはまるで外国製の歯ブラシの名前みたいな、味気ないものに思われました。 銭湯を出て、橋を渡り、家へ帰って黙々とめしを食い、それから自分の部屋に引き上げて、机の上の百枚ちかくの原稿をぱらぱらとめくって見て、あまりのばかばかしさに呆(あき)れ、うんざりして、破る気力も無く、それ以後の毎日の鼻紙に致しました。
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