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僕等は今日もまた長い間、感歎しながら、この美しくも雄渾な群像を眺めつくしていた。 それはたえず真青な閃光を浴びるので、なんだか不可思議なもののような感じがした。 僕の連れはいった。 「まったくだ。ベルニニなら、その弟子の作でもたまらなくいいね。敵があるなんて、僕にはわからないよ。――そりゃ、もしあの最後の審判が、絵よりも彫刻に近いとすれば、ベルニニの作はどれだって彫刻よりも絵に近いさ。だけど、これ以上の偉大な装飾家があるだろうか。」 「いったい君は、」と僕は問うた。 「この噴水にどういういわれがあるか、知っているのかい。誰でもロオマに別れる時、この水を飲めばね、その人はまた帰って来られるというんだよ。さあ、これが僕の旅行コップだ――」といって、僕はほとばしる水条の一つで、それをみたした。 「君はぜひ君のロオマに再会しなけりゃね。」 彼はコップを取って唇へ持って行った。 と、その刹那に、空一面がまばゆいばかりの長くつづく火光で、ぱっと燃えあがった。 と思うと、がちゃんと音がして、その薄い器は水盤の角に当って、粉々に砕け散った。 パオロはハンケチで、服についた水をぬぐった。 「気がたかぶっていてへまをやった。」と彼はいった。 「もう行こうじゃないか。あのコップは別に大したものじゃなかったんだろうね。」
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