(606字。目安の読了時間:2分)
やがて、くるりと振り返ると、僕に一通の手紙を差し出して、ただ一言いった。 「読んで見ろよ。」 僕は彼の顔を見た。 黒い、熱に燃えた眼のある、この細い黄ばんだ病人らしい顔には、だいたい死だけが呼び起し得るような表情――すさまじい厳粛さが浮かんでいた。 それが僕の眼を、受け取った手紙の上に落させてしまった。 そして僕は読んだ―― 『敬愛するホフマン兄。 貴兄の御宿所を知ることができたのは、小生の依頼に御親切にも応じて下さった、御両親様のおかげです。 貴兄がこの手紙を快く受け納れて下さるよう願っています。 敬愛するホフマン兄、小生はこの五年間、常に至誠の友情をもって、貴兄の上を想っていたと断言することを、どうかお許し下さい。 もし貴兄にも小生にも心苦しかったあの日の急な御出立が、小生および小生の家族に対する御憤激を表わしていたものと推定せねばならぬとすれば、それについての小生の悲しみは、貴兄が小生に娘を懇望せられた時、小生の感じた驚愕と深い意外の念よりも、さらにさらに大きいでありましょう。 あのおり小生は、男子として男子たる貴兄に語りました。 なぜ小生が――これはいくら強調しても足りないのですが――あらゆる点で大いに尊敬している人に、自分の娘を上げるのをおことわりせねばならぬかというわけを、小生は腹蔵なく正直に、残酷と思われる危険を冒してまでも、貴兄にお伝えしました。
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