(580字。目安の読了時間:2分)
『どうしてあなたが、そういつまでも旅行して廻れるんだか、さっぱりわかりませんな。 悪いことはいわないから、国へ帰って寝床につきたまえ』ってね。 その医者は毎晩僕と一緒に、ドミノをやっていたもんだから、それでいつもそんなに遠慮がなかったんだよ。 「僕はやっぱり依然として生きている。 が、ほとんど毎日のようにだめになるんだ。 晩、まっくらな中に横になっているね――右を下にしてだよ、いいかい――すると、動悸がのどもとまで響いてくる、めまいがして冷汗が出る、と思うと、たちまち死の手にさわられるような気がする。 一刹那、からだ中のものがすっかりとまって、心臓の鼓動が絶えて、息ができなくなってしまう。 そこで、ぱっと起き返って、あかりをつけて、ほっと溜息をついて、あたりを見廻して、いろんな物を眼で吸い込むようにするんだね。 それから水を一口飲んで、またもとの通り横になる。 いつも右を下にしてだよ。 それでそろそろ寝つくんだ。 「僕は非常に深く、非常に長く眠る。 いったいに、絶えず死ぬほど疲れているんだからね。 僕はそうしようと思えば、このままここに横になって、死んでしまうこともできるんだ。 ほんとだよ。 「この何年間、僕はもう何度も何度も、死と直面したことがあると思う。が、死にはしなかった。――なにかに支えられているんだね。
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