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それから小声で、自信ありげにいった。 「僕は幸福になるだろうと思っているよ。」 心から彼の手を握って、僕は別れを告げた。 実は内々、ある危惧を制することができなかったのだけれども。 それから数週間すぎた。 その間僕は、時々パオロと一緒に、男爵の客間で午後の茶を飲んだ。 そこにはいつも、小人数ながらずいぶん感じのいい連中が集っていた。 若い宮廷劇場附の女優、医者、将校――僕はもう一々覚えてはいない。 パオロの態度には、別に変ったところも見えなかった。 例の気がかりな外貌にもかかわらず、常に昂然とした嬉しそうな気持でいて、男爵令嬢のそばにいると、いつも必ず、僕が最初認めた、あの不気味な落ち着きを見せていた。 するとある日――パオロには偶然二日の間逢わずにいた――ルウドウィヒ街で、僕はフォン・シュタイン男爵に、ふと出会った。 男爵は馬に乗っていたが、馬をとめて、鞍の上から僕に手をさし出した。 「いい所でお目にかかりました。明日の午後は宅へおいで下さるでしょうな。」 「そちらさえお差支えなければ、間違いなく上ります、男爵。友だちのホフマンが、毎木曜のように誘いに来てくれるかどうか、それがもしかはっきりしないような場合でも……」 「ホフマンが? おや、あなた御存じないのですか――ホフマンは出立してしまったのですよ。
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