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快活にいきいきと、一別以来の生活を語った。 僕と別れてからまもなく、画家になることをやっとのことで両親に許してもらって、九カ月ほど前にアカデミイを終ると、――今しがたは、偶然アカデミイに寄ったのである――しばらく旅で、なかんずくパリで暮して、約五カ月以来このミュンヘンに住みついている……「多分まだずっと長くいるかも知れない――そりゃわからない。あるいは永久にね……」 「そうなのかい。」と僕は問うた。 「まあさ。つまりその――そうなってもいいわけじゃないか。この町が気に入ってるんだもの。特別に気に入ってるんだもの。全体の調子といい――ねえ、どうだい――人間といいさ。それにこりゃなかなか肝腎なことだがね、画家としての……まったく無名でもだよ……社会的地位は実際すてきなものなんだ。こんなにいいところがほかにあるもんか……」 「気持のいい知り合いでもできたかい。」 「うん、たくさんじゃないが、その代り非常にいいのがね。たとえばある家なんぞは、君に勧めずにはいられないな……謝肉祭の時に知り合いになったんだ……ここの謝肉祭は実に愉快なんだぜ。――シュタインという家だ。おまけにシュタイン男爵なんだ。」 「そりゃいったいどういう貴族なんだろう。」 「金力貴族という奴さ。男爵というのはもと相場師でね、昔はウィインでおそろしい勢力があって、全皇族と交際したりなんかしていたんだよ。
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