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この町のはずれの、平たい敷石をしいた屋根の上に――そこの欄干は瀬戸物でできているように見えます――白い大きな風鈴草をさした、きれいな花瓶が置いてありましたが、そのそばに美しいペーが、細いいたずらっぽい眼と、ふくよかな唇と、それは小さな足をしてすわっていました。靴のために足はしめつけられていましたが、心はもっともっと強くしめつけられているのでした。娘がきゃしゃな美しい腕を上げますと、しゅすがさらさらと音をたてました。 娘の前にはガラス鉢が置いてあって、金魚が四ひきはいっていました。娘はうるしをぬった、色どり美しい箸で、水の中をそっとかきまわしていました。何か物思いにしずんでいましたので、ほんとうに、ほんとうにゆっくりとかきまわしていました。ああ、金魚はなんて豊かな金色の着物を着ているのだろう、そしてガラス鉢の中でなんてのどかに暮しながら、たくさんの餌をもらっているのだろう、でも、もしも自由になれたら、そしたらどんなに幸福だろう、と、きっとこんなことを思っていたのでしょう。ほんとうに、この美しいペーにはそれがよくわかっていたのです。ペーの思いは家からさまよいでました。そしてお寺へと向いました。けれどもそれは、仏のためではありません。あわれなペー! あわれなスイ・ホン! 現世でのふたりの思いは、めぐりあいました。しかしわたしの冷たい光は、大天使の剣のように、このふたりのあいだに横たわっていました!」―― [#改ページ] 第二十八夜 「海は凪(な)いでいました」と、月が言いました。 「水は、わたしが帆走っていた澄みきった空気のように、透きとおっていました。わたしは海面よりもずっと下に生えている珍しい植物を見ることができました。それらは森の中の巨木のように、幾尋もある茎をわたしのほうへさし上げていました。魚がその頂の上を泳いで行きました。 空高く野の白鳥の群れが飛んでいました。
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