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』それは小さい煙突そうじの小僧でした。生れてはじめて煙突の中をてっぺんまでのぼってきて、頭を外につき出したのでした。 『ばんざい!』そうです、そのとおりです。たしかにこれは、狭苦しい管や小さい煖炉の中を這(は)いずりまわるのとは、いささかわけが違っていました。そよ風がすがすがしく吹いていました。町じゅうが緑の森のあたりまで見わたせました。ちょうど太陽がのぼりました。まるく大きく、太陽は小僧の顔を照らしました。その顔はじつにみごとに煤(すす)でまっ黒になっていましたが、嬉(うれ)しさにかがやいていました。 『さあ、おいらは、町じゅうのものに見えるんだ!』と、小僧は言いました。『お月さまにだって、おいらが見えるんだ。お日さまにだってよ! ばんざい!』こう言いながら、小僧はほうきを打振りました」 [#改ページ] 第二十七夜 「ゆうべ、わたしは中国のある町を見おろしました」と、月が言いました。 「わたしの光は街路をつくっている、長いはだかの土塀を照らしました。あちこちに門がありましたが、どれもしまっていました。なぜかといいますと、中国人は外の世界のことなんか、ちっとも気にとめていないからです。厚いよろい戸が、家の土塀のうしろの窓をおおっていました。ただお寺だけから、弱い光が窓ガラスをとおしてかすかに射していました。 わたしは中をのぞいてみました。すると、色とりどりの華やかさが眼にうつりました。床から天井まで、まばゆいほどの色彩と金めっきをほどこした絵がかかっていました。それはこの下界における仏たちの所業をえがいたものでした。一つ一つの厨子の中には仏像が立っていましたが、色どりゆたかな幕や垂れ下がった旗のためにほとんど隠れていました。そしてどの仏の前にも――それはみんな錫(すず)でつくってあります――小さい祭壇があって、そこには聖い水と、花と、火のともっているろうそくとがありました。
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