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その巨大な神はスフィンクスに身をもたせて、まるで移り行く年月のことを考えてでもいるかのように、物思いにしずんで、夢みるように横たわっていました。小さい愛の神のアモールたちは、そのまわりでワニとたわむれていました。豊饒の角の中にはごく小さいアモールがひとり、腕を組んですわっていました。そして、おごそかな顔をした大きな河の神を見ていました。このアモールは、あの紡車のそばにいた小さい男の子にそっくりの姿をしていました。顔かたちもおんなじでした。 ここには、小さな大理石の子供がまるで生きているように、かわいらしく立っていました。けれどもその子が大理石の中からとびだして以来、年の車はもう千回以上もまわっているのです。あのみすぼらしい部屋の中の男の子が紡車をまわしたと同じ数だけ、もっと大きな年の車もぶんぶんとまわったのです。そしてこの世紀が、このような大理石の神々をつくりだす日まで、さらにさらにまわりつづけていくのです。 いいですね、これはみんな幾年も前のことですよ。ところできのう」と、月は語りつづけました。 「わたしはシェラン島の東海岸にある、どこかの入江を見おろしていました。そこには美しい森や、小高い丘や、赤い壁をめぐらした古いお屋敷などがあって、外堀には白鳥が泳いでいます。そして、りんご園のあいだに教会の立っている小さな田舎町があります。 たくさんの小舟が、それぞれたいまつをつけて、静かな水のおもてをすべって行きました。しかし、たいまつをつけていたからといって、それはウナギを捕るためではありません。いや、それどころか、あたりのようすからしてお祭のようでした! 音楽が鳴りひびき、歌がうたわれました。一そうの小舟のまん中には、今夜みんなが敬意を表わしている人が立っていました。それは大きなマントにくるまった、背の高い、がっしりした男で、青い眼と長い白い髪の毛を持っていました。
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