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そこで監督は、美しいコロンビーナと陽気なアルレッキーノが出なくても見物人を失望させないように、何かほんとうに愉快なものを上演しなければなりませんでした。そのため、プルチネッラはいつもの二倍もおかしく振舞わなければならなかったのです。プルチネッラは心に絶望を感じながらも、踊ったり跳ねたりしました。そして拍手喝采を受けました。 『すばらしいぞ(ブラボー)! じつにすばらしい(ブラビッシモ)!』 プルチネッラはふたたび呼び出されました。ああ、プルチネッラは、ほんとうに測りしれない価値のある男でした! ゆうべ芝居が終ってから、この小さな化物はただひとり町を出て、さびしい墓地のほうへさまよって行きました。コロンビーナの墓の上の花輪は、もうすっかりしおれていました。プルチネッラはそこに腰をおろしました。そのありさまは絵になるものでした。手はあごの下にあて、眼はわたしのほうに向けていました。まるで一つの記念像のようでした。墓の上のプルチネッラ、それはまことに珍しいこっけいなものです。もしも見物人がこのお気に入りの役者を見たならば、きっとさわぎたてたことでしょう。 『すばらしいぞ(ブラボー)プルチネッラ、すばらしいぞ(ブラボー)、じつにすばらしい(ブラビッシモ)!』」 [#改ページ] 第十七夜 月が話してくれたことを聞いてください。 「わたしは幼年学校の生徒が士官になって、はじめてりっぱな制服を着たのを見たことがあります。舞踏会の衣裳をつけた若い娘や、宴会服を着て楽しそうにしている公爵の若い花嫁を見たこともあります。けれどもどんな喜びも、わたしが今夜見たひとりの子供、四つになる小さい女の子の喜びには、とうていくらべることができません。 その子は新しい青色の着物と新しいバラ色の帽子をもらって、いまそのすばらしい晴れ着を着たところでした。みんなが明りを求めて呼んでいました。窓からさしこむ月の光だけでは十分ではないので、もっと明るい光で照らさなければならなかったのです。
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