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だけども、人間は神さまの姿を見ることができない。だから、神さまが赤ん坊を連れていらっしゃるのも、ぼくたちには見えないのさ』 その瞬間、ニワトコの木の枝の中でザワザワという音がしました。子供たちは両手を合せて、互いに顔を見合せました。たしかに神さまが子供を連れてきたのです。――ふたりは手を取り合いました。家の戸があきました。それはおとなりのおばさんでした。 『さあ、はいってらっしゃい』と、おばさんは言いました。『コウノトリが何を持ってきてくれたかごらんなさい。ちっちゃな弟さんよ!』すると、子供たちはうなずきました。ふたりとも、その弟が来たことを、もうちゃんと知っていたのです」 [#改ページ] 第十五夜 「わたしはリューネブルクの荒野の上をすべって行きました」と月が言いました。 「道ばたに小屋が一軒、ぽつんと立っていました。葉の散り落ちた藪(やぶ)が二つ三つ、そのすぐそばにありました。そこでは、どこからか迷いこんできたナイチンゲールが歌をうたっていました。けれども、ナイチンゲールは夜の寒さのために死ななければなりません。わたしが聞いたのは、そのナイチンゲールのこの世での最後の歌だったのです。 暁の光が輝きました。旅人の一隊がやってきました。それは外国へ移住して行く農夫の一家でした。船でアメリカへ渡ろうとして、ブレーメンかハンブルクへ行くところだったのです。この人たちはアメリカへ行けば、幸運が、夢みている幸運が、花を開くものと思っていたのでした。女たちは小さい子供を背中に背負っていました。いくらか大きい子供たちはそのそばを跳びはねていました。やせこけた一頭の馬が、わずかばかりの家具をのせた車を引いていました。 つめたい風が吹いてきました。それで小さい女の子は、母親のそばにぐっとからだをすり寄せました。
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