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屋根は苔(こけ)でおおわれていて、黄色い花やイワレンゲが咲いています。小さい庭にはキャベツとばれいしょがあるだけですが、生垣にはニワトコが花をいっぱいに咲かせています。 その下に、ひとりの小さい女の子がすわっていました。その子は鳶色の眼で、二軒の家のあいだに立っている古いカシワの木をじっと見つめていました。この木は枯れた高い幹を持っているのですが、その上の方は鋸(のこぎり)でひき切られていました。そこにコウノトリが巣をつくっていました。ちょうどいまコウノトリがその上に立って、くちばしをガチャガチャやっていました。 ひとりの小さい男の子が出てきて、女の子のそばに並びました。このふたりは兄妹だったのです。 『何を見てるんだい?』と、男の子はききました。 『コウノトリを見てるのよ』と、女の子が言いました。『おとなりのおばさんがね、コウノトリが今夜あたしたちに小さい弟か妹を連れてきてくれるって言ったの。だからあたし、コウノトリが来るのを見ようと思って、気をつけてるのよ』 『コウノトリなんて、なんにも持ってきやしないさ』と、男の子が言いました。『いいかい、おとなりのおばさんは、ぼくにもおんなじことを言ったけど、そう言ったとき笑ってたんだ。それでぼく、おばさんに、きっとですかって、きいたのさ。――だけどおばさんは返事ができなかったんだぜ。だからぼくには、ちゃんとわかっちゃったんだ。コウノトリの話なんて、ぼくたち子供にほんとうらしく思わせるだけのことさ!』 『だけど、そんなら赤ちゃんはどこから来るの?』と、女の子はたずねました。 『神さまが連れてきてくださるのさ』と、男の子は言いました。『神さまは外套の下に入れて連れていらっしゃるんだよ。だけども、人間は神さまの姿を見ることができない。
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