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』それからランプを消しました。楽しい部屋の中はまっくらになりました。しかしわたしの光は、花婿の眼が輝いていたように、輝いていました。――女性よ、詩人が生命の神秘をうたうときには、その竪琴にキスをなさい!」 [#改ページ] 第十二夜 「わたしはポンペーの一つの光景をきみに話してあげましょう」と、月が言いました。 「わたしは『墓場通り』といわれている郊外にいました。そこには美しい記念碑がいくつか立っています。そのむかし狂喜した若者たちが、ひたいにバラの花を巻いて、美しいライスの姉妹たちと踊ったところです。いま、そこは死んだように静まりかえっていました。ナポリに勤務しているドイツ兵が警備にあたっていて、トランプやさいころ遊びをやっていました。 外国人の一団が警備兵につきそわれて、山の向うから町の中へはいってきました。この人たちは、わたしの照り輝く光の中で、墓の中からよみがえった都市を見ようと思ったのです。そこでわたしは、広い熔岩をしきつめた街路にのこっている車輪の跡を見せてやりました。それからまた、戸口に書いてある名前や、昔のままにかかっている看板を見せてやったりしました。その人たちは、小さい中庭では貝がらで飾られた噴水受けの水盤を見ました。しかし、いまは水も噴き上がってはいませんでした。また金属製の犬が戸口の番をしている色あざやかな部屋々々からも、歌声一つひびいてはきませんでした。 それは死の都でした。ただベスビオの山だけは、あいもかわらず永遠の讃歌をとどろかしていました。その一つ一つの詩句を、人間は新しい爆発と呼んでいるのです。わたしたちはビーナスの神殿に行きました。それはきらきら光るまっ白な大理石でできていました。広い階段の前に高い祭壇があって、円柱のあいだに生えているしだれヤナギはいきいきとしていました。
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