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キイチゴの蔓(つる)とリンボクが、石の間からのびています。ここに、自然の中の詩があるのです。きみは、人々がこれをどんなふうに考えていると思いますか? そうだ、わたしがそこで、きのうの夕方から夜にかけて聞いたことだけを話してあげましょう。 最初に金持の農夫がふたり、馬車に乗ってやってきました。 『そこらにあるのは、たいした木じゃないか!』と、ひとりが言いました。 『一本あたり、十駄のまきはとれるよ!』と、もうひとりが答えました。 『この冬もきびしい寒さになるぜ。去年は一坪十四ターレルで売ったっけな!』 こう言って、ふたりは通りすぎて行きました。 『ここは道が悪いなあ!』と、べつの馬車で来た人が言いました。 『そりゃあ、あのいまいましい木のためさ!』と、つれの者が答えました。 『なにしろここは、海のほうからしか風が吹いてこないんだからね!』 こう言いながら、このふたりも通りすぎて行きました。駅馬車も通りかかりました。こんなにすばらしい景色のところへ来ても、みんな眠っていました。御者はラッパを吹きならしました。そして心の中では、『おれの吹き方はうまいもんだ。それによ、ここへ来ると、ほんとうにいい音がでる。だが、みんなはどう思っているかな?』と、こんなことばかりを考えていました。こうして、駅馬車も行ってしまいました。 こんどは、ふたりの若者が馬をとばせてやってきました。この血の中には青春とシャンパン酒があるな、とわたしは思いました。このふたりも、口もとに微笑をうかべながら、苔(こけ)のむした丘と薄暗い茂みのほうをながめました。 『水車屋のクリスチーネといっしょに、ここを散歩したいなあ!』と、ひとりが言いました。 それから、ふたりは駆け去りました。あたりの花は、たいへん強くにおいました。
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