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華麗な広間、戦っている人々の群れ! 引裂かれた旗は床の上に落ちていました。三色旗は銃剣の先にはためいていました。そして玉座の上には、青ざめて聖らかな顔をした貧しい男の子が、眼を天へ向けて横たわっていました。手足は死との戦いのために、もうぐったりとしていました。あらわな胸、みすぼらしい着物、そしてその上を半ばおおっている、銀のユリの花のついた、立派なビロードのひだ。この子がまだゆりかごの中にいたころ、そのそばで『この子はフランス国の玉座の上で死ぬだろう!』という予言がなされていたのです。母親の心は、新しいナポレオンを夢みていたのでした。 わたしの光は、その子のお墓の上の不滅花の花輪にキスをしたものです。そして今夜は、年とったお婆さんのひたいにキスをしました。そのときお婆さんは、きみが絵にすることのできる『フランス国の玉座の上の貧しい男の子』の絵を、夢にみていました」 [#改ページ] 第六夜 「わたしはウプサラにいました」と、月が言いました。 「わたしは作物の育たない畑と、わずかしか草の生えていない大きな平野を見おろしました。わたしはフュリス河に自分の姿を映しました。ちょうどそのとき、蒸気船にびっくりした魚が、葦(あし)のあいだに逃げこみました。わたしの下の方を雲が走っていましたが、長い影をオーディンの墓、トールの墓、フレイヤの墓と人々が呼んでいる小高い丘の上に投げていきました。これらの丘の上をおおっている薄い芝生の中には、人々の名前が切りこまれていました。ここには旅行者たちが自分の名前を刻みつけることのできるような記念石もなければ、どこかに自分の姿をえがかせることのできるような岩壁もありません。ですから、ここを訪れる人々は芝生を刈りとらせました。はだの見える地面が、大きな文字や名前となって現われています。
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