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この料理は小麥を牛乳で煮て藥味で味をつけたもので、昔クリスマス・イーヴにはお定まりの一皿であつた。 わたしにとつて嬉しかつたのは舊知のミンスト・パイをづらりと並んだ御馳走の隨員の中に見つけたことであつた。 そしてこのパイが完全に格式通りのものと分り、またこれがわたしの大好物であることを恥ぢるに及ばぬと分つたので、いつもわたし達が昔馴染の大變上品な知友に挨拶する時のあの温い友情を籠めて、わたしはこのパイに挨拶したのであつた。 一座の興を引立たせた面白い變り者があつて、彼をブレイスブリッジ君はマースター・サイモンと云ふ變つた呼び名で呼びかけてゐた。 彼はきちんとした服裝をつけてきびきびした小男で、その物腰は正眞正銘の獨身老人であつた。 鼻の形は鸚鵡の嘴のやうで、顏には微かに天然痘の痕があり、秋の霜にあつた木の葉のやうに、いつも乾いて赭みを帶びてゐた。
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