(441字。目安の読了時間:1分)
鐡床は大きな、のしかかるやうな煖爐から取り外されて、薪火を燃すやうにしつらへ、その眞中にはすばらしく大きい丸太が赫々と燃えさかつて、大量の光と熱とを發散してゐた。 これがユール・クロッグと云ふものだとのこと、老主人が特別に心を用ひてクリスマス・イーヴに運び込んで燃やし、昔の慣例を守つたのであつた。 まことに目に喜ばしく映つたのは老主人の姿であつた。 親讓りの肱掛椅子に腰をかけ、客人をもてなす先祖代々の爐を傍にして、あたりを見※す樣子は列星の中心の太陽が、一人一人の心に温みと歡びとを放射するのにも似てゐた。 躯を伸してその足元にねころがつてゐる犬でさへ、もの憂げに寢がへりをして欠伸をする時には、懷しげに主人の顏を見上げ、尾を床にばたばたさせて、また伸々と眠につくのであつて、その温情と庇護に頼り切つてゐるのであつた。 この純眞な款待の中には何か心の底から流れ來るものがあつて、それを言葉では描き出せないが、直に精神に感應して、新來の客人をも打寛がせるのであつた。
========================= ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://bit.ly/33hMHlR
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001257/files/56033_50983.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ■月末まで一時的に配信を停止: https://forms.gle/d2gZZBtbeAEdXySW9
配信元: ブンゴウメール編集部 NOT SO BAD, LLC. Web: https://bungomail.com 配信停止:[unsubscribe]