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わたしは今まで廣間と呼んで置いたが、實際たしかに昔は廣間であつたもので、老主人も明かにそれを昔の儘の姿に修復しようと心掛けたものと見えた。 どつしりと突き出てゐる煖爐の上には、甲冑をつけて白馬の側に立つた武士の肖像が掛つて居り、それと向ひ合つた側の壁には兜と楯と槍が掛つてゐた。 室の一端には非常に大きな鹿の角が壁の中に嵌め込んであつて、その鹿叉は帽子や鞭や拍車を懸ける用をなしてゐた。 室の隅々には鳥銃や釣竿、その他遊獵の道具が置いてあつた。 家具は前代の物々しく手數のかかつた造り方であつた、とは云つても當時の便利な品々も幾らか加へられてゐる、樫材の床には絨毯(じゆうたん)を敷いてあるので、全體の感じは應接間と廣間の奇妙な寄せ集めであつた。 鐡床は大きな、のしかかるやうな煖爐から取り外されて、薪火を燃すやうにしつらへ、その眞中にはすばらしく大きい丸太が赫々と燃えさかつて、大量の光と熱とを發散してゐた。
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