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体温平生に復したれど用心して起き出でず。 八重次来りて前日の如く荷づくりをなす。 春陽堂店員来り、全集第二巻の原稿を携へ去る。 十二月二日。 小雨降出して菊花はしほれ、楓は大方散り尽したり。 病床を出で座右の文房具几案を取片付く。 此の度移転の事につきては唖※子兼てよりの約束もあり、来つて助力すべき筈なるに、雑誌花月廃刊の後、残務を放棄して顧みざれば、余いさゝか責る所ありしに、忽之を根に持ち再三手紙にて来訪を請へども遂に来らず。 竹田屋主人と巴家老妓の好意によりて纔に荷づくりをなし得たり。 唖唖子の無責任なること寧驚くべし。 十二月三日。 風邪本復したれば早朝起出で、蔵書を荷車にて竹田屋方へ送る。 午後主人手代を伴来り家具を整理す。 此日竹田先日持去りたる書冊書画の代金を持参せり。 金壱千弐百八拾円ほどなり。 十二月四日。 家具什器を取まとめし後、不用のがらくた道具を売払ふ。 金壱百弐拾円ほどになれり。 午後春陽堂店員来りて全集第一巻の※印を請ふ。 十二月五日。 寒気甚し。 庭の霜柱午後に至るも尚解けず。 此日売宅の計算をなすに大畧左の如し。 一金弐万参千円也 地所家屋 一金壱千八百九拾弐円也 家具什器 一金壱千壱百六拾参円八拾弐銭也 来青閣唐本及書画 一金八拾七円卅五銭也 荷風書屋洋本 一金壱百弐拾壱円〇五銭也 古道具 総計金弐万六千弐百六拾四円弐拾弐銭也 支出金高
一金弐千五百円也 築地引越先家屋買入
一金四百六拾円也 建物会社手数料
総計金弐千九百六拾円也
差引残金
金弐万参千参百〇四円弐拾弐銭也
十二月六日。
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