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門前何とはなく人の徃来繁し。 猶病床に在り。 書を松莚子に寄す。 月明前夜の如し。 十一月十七日。 雨ふる。 午前五来素川氏来訪せらる。 雑誌大観に寄稿せよとのことなり。 午後より座右のものを取片づけ居宅引払の凖備をなす。 夕刻唖※湖山の二子来る。 唖※子湖山子の周旋にて毎夕新聞社に入りしといふ。 花月はいよ/\十二月かぎりにて廃刊と決す。 十一月十八日。 早朝より竹田屋の主人来り、兼て凖備せし蔵書の一部と画幅とを運去る。 午後数寄屋橋歯科医高島氏を訪ひ、梅吉方に赴き、十二月納会にまた/\出席の事を約す。 明烏下の段をさらふ。 此日晴れて暖なり。 十一月廿日。 本年秋晩より雨多かりし故紅葉美ならず、菊花も亦香気なし。 されど此日たま/\快晴の天気に遇ひ、独り間庭を逍遥すれば、一木一草愛着の情を牽かざるはなし。 行きつ戻りつ薄暮に至る。 十一月廿一日。 午前薗八※[#「くさかんむり/即」、U+83AD、45-6]けいこに行く。 この日欧洲戦争平定の祝日なりとて、市中甚雑※せり。 日比谷公園外にて浅葱色の仕事着きたる職工幾組とも知れず、隊をなし練り行くを見る。 労働問題既に切迫し来れるの感甚切なり。 過去を顧るに、明治三十年頃東京奠都祭当日の賑の如き、又近年韓国合併祝賀祭の如き、未深く吾国下層社会の生活の変化せし事を推量せしめざりしが、此日日比谷丸の内辺雑※の光景は、以前の時代と異り、人をして一種痛切なる感慨を催さしむ。 夜竹田書店主人来談。
十一月廿二日。
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