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人物 黒田賢一郎 二十八歳 その弟 新二郎 二十三歳 その妹 おたね 二十歳 彼らの母 おたか 五十一歳 彼らの父 宗太郎 時 明治四十年頃 所 南海道の海岸にある小都会 情景 中流階級のつつましやかな家、六畳の間、正面に箪笥があって、その上に目覚時計が置いてある。 前に長火鉢あり、薬缶から湯気が立っている。 卓子台が出してある。 賢一郎、役所から帰って和服に着替えたばかりと見え、寛いで新聞を読んでいる。 母のおたかが縫物をしている。 午後七時に近く戸外は闇し、十月の初め。 賢一郎 おたあさん、おたねはどこへ行ったの。 母 仕立物を届けに行った。 賢一郎 まだ仕立物をしとるの。 もう人の家の仕事やこし、せんでもええのに。 母 そうやけど嫁入りの時に、一枚でも余計ええ着物を持って行きたいのだろうわい。 賢一郎 (新聞の裏を返しながら)この間いうとった口はどうなったの。 母 たねが、ちいと相手が気に入らんのだろうわい。 向こうはくれくれいうてせがんどったんやけれどものう。 賢一郎 財産があるという人やけに、ええ口やがなあ。 母 けんど、一万や、二万の財産は使い出したら何の役にもたたんけえな。
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