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『計算は済みました。 其の坊さんの要求を満足さしてやりますには、あなたの穀倉の中にある小麦だけでは足りません。 町中にあるだけでも、国中にあるだけでも足りません。 世界中のでも足りません。 要求された量の小麦粒で、海と陸とをよせた大地球全体を、指の深さにちつとも断れ間のないやうに覆ふてしまふ事が出来る程なのです。』 王様は自分で其の小麦の粒の勘定ができなかつたのを怒つて自分の髭をかんだ。 そして此の有名な将棋の発明者は一番位置の高い大臣になつた。 怜悧(りこう)な坊さんは最初からそれをのぞんでゐたのだ。 『その王様のやうに、僕だつてその坊さんの罠におちたでせう』とジユウルが云ひました。 『僕も一と粒を六十四へん倍加すると云つてもたつた一と握りの小麦をやつたらうと思ひますよ。』 『これでお前達は』とポオル叔父さんは返事しました。 『数といふものはどんなに小さくても、おなじ数字を何辺も倍加してゆくと、丁度雪の球をころがして大きくしてゐると、私達の精一杯の力でも動かすことの出来ないやうな大変大きな球になるのとおなじに、莫大なものになると云ふ事がわかるやうになつたらう。』 『其の坊さんは大変ずるかつたんですね。』とエミルが云ひました。 『自分の青い鳩にやる少しの小麦で自分が満足するやうな事を云つて、ほんの少々ねだるやうに見せかけて置いて、実は王様の持つてゐるのよりももつと沢山のものをねだつたりして。 其の坊さんつて云ふのは何んですか? 叔父さん。』 『東洋の方のある宗教の坊さんなんだ。』 『叔父さんは、王様がその坊さんを地位の高い大臣にしたと云ひましたね。』 『地位のある大臣達の中でも一番地位の高い大臣だ。 坊さんは、その時から国中で王様に次ぐ一番えらい役人になつたのだ。』 『僕、坊さんが其の金貨が千枚づつはいつた十の財布をことわつたと云ふのには一寸おどろきましたよ。
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