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一つのからなんか蟻が出て来ると道が真黒な位どつさりゐましたよ。 あんなのは小さい虫をみんな育てるのに、よつぽど沢山の木虱がいりますね。』 『それは大変なもんだよ。』と叔父さんはジユウルに話しました。 『が蟻は決して牝牛に不足する事はないだらうよ。 そして木虱は不足しないどころかそれよりもつと沢山ゐるんだよ。 それは時々私達のキヤベツの収穫がうまくゆくかどうかを真面目に心配さす程沢山ゐるんだ。 此の小さな虱が、人間に戦争をしようと云ふんだ。 こんな話がある。 それは此の事がよく分るからお聞き。 『昔、印度に一人の王様があつた。 その王様は人困らせのくせがあつた。 その王様を慰める為めに、或る坊さんが将棋遊びを工夫した。 お前達はその遊びをしるまいね。 よろしい。 それはね、あの碁盤のやうな盤の上で、両方に分れて一方は白、一方は黒で、卒、騎士、僧正、城、女王、王、と云ふやうにいろ/\ちがつた棋子をならべて陣だてをする。 そして戦ひをはじめる。 卒はたゞの歩兵で、いつも、戦場での最初の名誉の戦死をする事にきまつてゐる。 王様は堂々と守護されて遠くの方から卒共が敵を逐つ払ふ闘ひの様子を見てゐる。 騎士は剣で手当りしだいに左右の敵を切りまくる役目だ。 僧正達でさへもやつきになつて戦ふ。 そして城は軍隊で其の側面を護られながら、彼方へ行つたり此方へ行つたりして、移りまはる。 勝利は決した。 黒の方の女王が捕虜になつた。 王は城をなくした。 或る騎士と僧正とが王の逃げ道をつくる為めに非常な働きをする。 けれどもそれもたうとう屈服する。 王はたうとう王手詰になつて敗ける。 勝負はおしまひになる。 『此の巧妙な勝負事は戦争をかたどつたもので、其の人困らせの王様を非常に満足させたのだ。 で、王様は坊さんに、其の発明をした御褒美に何かのぞみがあるかどうかたづねた。 『ほんの一寸した事で結構でございます』と此の発明者は答へた。
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