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』とクレエルが叫びました。 『不思議だねえ。 だが、接骨木ばかりが蟻の牝牛共のゐる藪ではないんだよ。 木虱は他のいろんな木にも見つける事が出来るのだ。 キヤベツや薔薇の藪にたかつてゐる木虱は緑色をしてゐるし、接骨木や、豆や、けしや、蕁麻や、柳、ポプラのは黒、樫と薊(あざみ)のは青銅色、夾竹桃や胡桃とか榛(はんのき)とかにつくのは黄色だ。 みんな二つの管を持つてゐて、其れから甘い汁を滲み出させて、お互ひに蟻の御馳走の為めに競争してゐるのだ。』 クレエルと叔父さんは、家にはいりました。 エミルとジユウルとは今見た事に夢中になつて、木虱を他の木でさがしはじめました。 そして二人は一時間とたゝないうちに、四種類の木虱を見つけました。 そしてどの種類もみんな不公平なく見舞ふ蟻達をもてなしてゐました。 五 牛小舎 夕方、ポオル叔父さんはまた、蟻の話の続きをはじめました。 丁度その時に、ジヤツクは、何時もするとほりに、牡牛が秣(まぐさ)をたべてゐるかどうか、そして御馳走をたべた仔牛共が無事に母親のそばで眠つてゐるかどうか、と家畜小屋を見まはつて来た処でした。 そして、もう柳の籠を編む仕事がお仕舞ひになつたと云ふので其処に腰を据ゑてゐました。 ジヤツクも蟻の牝牛の本当の訳を知りたいのです。 ポオル叔父さんは、今朝みんなが接骨木の木で何を見たか、又、木虱がどうして甘い滴をその管から滲み出させるか、蟻がどうして、その結構な汁を飲むか、そしてどうしてそれを知つたか、もし必要な時には木虱を撫でさすつてもそれを手に入れる、と云ふ事まで委しく話して聞かせました。 『あなたが私共に話して下さいました事は』とジヤツクが云ひました。 『私のやうに年老つた者でも動かされます。 そして神様が御自分でお創りになつたものにどんなに気をおつけになつてゐるかゞよくわかります。 神様は丁度人間に牝牛をあてがつて下すつたやうに、蟻には木虱をおあてがひになつたのですね。
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