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2020-08-11

科学の不思議(11/30)

(867字。目安の読了時間:2分)

蟻達は、途中で遊んだり、一寸の間でも仲間と立ち止まつて一緒に休むなどと云ふ事はないのだ。 それどころか! 蟻達の仕事は大急ぎなのだ。 そしてうんと働かなければならないのだ。 どれもどれも大真面目で、着くと直ぐ土の粒を置いては、又他のを捜しに降りて行く。 蟻達は一体何うしてそんなに忙しがつてゐるのだらう? 『其の蟻達は、地の下に、街や広場や、合宿所や、蔵などで、一つの町をつくつてゐるのだ。 自分や家族達の住居を掘つてゐるのだ。 蟻達は其の町や坑道を雨が滲み透さない様な深い処で掘つてゐる。 そして、其の坑道といふのは、長い大通りの街になつたり、小さな分れ道になつたり、他の道と彼方此方で交叉したり、上りになつたり下りになつたり、大きな会堂の中に通じたりしてゐるのだ。 そしてさうした大層な仕事は、みんな、蟻達の顎の力で曵(ひ)き出された一と粒一と粒で成就されるのだ。 若し誰でも地面の下で働いてゐる真黒な坑夫共の軍隊を見る事が出来たら、其の人は感心しないではゐられないだらう。 『その地面の下の真暗な深い穴の中では、土をひつかく者や、喞へる者や、曵きずる者や、数千の蟻が働いてゐる。 その辛抱強い事! そのひどい骨折り! そして、たうとう砂粒が道をあけると、蟻達が自慢らしく頭を高くあげて、さも得意さうにそれを運び上げて来はじめる事と云つたら! その蟻達の頭は、塚の頂上まで着くと、すつかり自分達の体が疲れてしまふ位の、大変な重荷の下でグラ/\してゐるのを私は見た。 蟻達は仲間とぶつかりながらも『私の働きを見てくれ』と云つてゐるやうに見える。 そして誰も自分の働きに対するその立派な誇りをとがめはしない。 少しづつ、町の門と云ふやうな穴の縁に、土の小さい塚が堆み上げられる。 其の塚の土は、つくつてゐる町の材料をけづつたものなのだ。 で、大きい塚なら地面の下の住居はやはり大きいのだと云ふ事はすぐ分る。 『地面の下で坑道を掘りさへすれば、それで蟻の仕事はおしまひかと云ふと、決してさうではない。

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