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2020-08-07

科学の不思議(7/30)

(836字。目安の読了時間:2分)

それだけ物事に注意をするやうになつて来たのです。 此の世の中では、いゝ独楽より他にもつと面白い事が沢山ある事がわかり出して来たのです。 ですから、何時かエミルが、お話を聞くためにおもちや箱の事は忘れてしまつたといふやうな事があつても、誰れも不思議がりはしないでせう。 二 お伽話と本当のお話  其の六人が一緒に集まつたのです。 ポオル叔父さんは大きな書物を読んでゐました。 ジヤツクお爺さんは柳の枝で籠を編んでゐました。 アンブロアジヌお婆あさんは糸捲竿をまはしてゐますし、クレエルは赤い糸でリンネルの縁をとつてゐました。 ジユウルとエミルは、ノアの箱船で遊んでゐます。 二人は駱駝(らくだ)のうしろに馬、馬のあとには犬、それから羊、驢馬、牛、獅子、象、熊、羚羊その他いろんなものをみんな長い行列に仕あげて、それを箱船までとどかしてしまふと、ジユウルもエミルも遊び倦きてしまひました。 そしてアンブロアジヌお婆あさんに云ひました。 『お婆あさん、お話をして頂戴な、面白さうなのをね。』  年をとつたお婆あさんは、紡錘をまはしながら無雑作に、こんな話をしました。 『むかしむかし、一匹のばつたが、蟻と一緒に市に出かけました。 処が川がすつかり凍つてゐました。 で、ばつたは氷の向ふ側の方に跳んでしまひました。 けれども蟻は跳べないのです。 其処で蟻はばつたに『ばつたさん、私をおんぶして下さいよ。 私はこんなに軽いんですからさ』と頼みました。 けれどもばつたは、『私のやうにしてお跳びよ』と云ひますので、蟻は跳びました。 けれども辷(すべ)つて足をくじきました。 『氷さん、氷さん、強い者は親切でなくてはいけないよ。 それだのにお前は悪い奴だよ。 蟻の足なんかくじかせてさ――あの可哀想な小さな足をさ――』  とばつたが云ひますと、氷が答へました。

『私よりお太陽さんの方が強いよ、あいつは私を融かしてしまふからね。

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