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そして又、沢山のお父さんや、お母さんや、叔父さんや、叔母さんや、姉さんや、兄さん達が、此の本で、小さい人達の目にうつるいろんな謎を、どういふ風に片づけてやるべきものか、と云ふ事、またその事柄をも併せて学んで下されば大変しあはせです。 なを、此の本は、少し前に、他の人の手で訳されて出てゐますが、それは、抄訳で、しかもポオル叔父さんの一番お得意な、全巻の三分の一をしめてゐる、虫の話が全部ぬいてありますので、別にまた此の書を出すのも決して無意味ではあるまいとおもひます。 伊藤野枝 [#改ページ] 一 六人 或る夕方、まだ外がやう/\暗くなりかけた時分から、六人の人達は、みんな一とかたまりになつて集まりました。 ポオル叔父さんは大きな本を読んでゐました。 叔父さんは、本を読むのは一番ためにもなり、また疲れをやすめるのに、これ程いゝものはないときめてゐますので、働いたあとでやすむ時には、いつも本を読みます。 叔父さんの室の、松材でつくつた棚の上には、いろんな種類の本が綺麗に整頓して並べてあります。 其の中には大きい本や小さい本や、絵入りのや絵なしのや、ちやんと製本したのや仮綴のまゝのや、また立派な金縁のまであるといふ風です。 叔父さんが其の自分の室に閉ぢ籠ると、大抵の事では其の読書を止めさす事が出来ません。 ですから、ポオル叔父さんはどんな話でも知つてゐるとみんなが云つてゐます。 叔父さんはたゞ読むばかりではありません。 自分で調べて見たり又物事を注意して見たりもするのです。 自分の庭を歩く時にも、よく蜜蜂がブン/\羽の音をさせてとり囲んでゐる巣箱の前や、小さい花が雪のやうに散つて来る接骨木の茂つた下で立ち止まつて見たり、又或る時には、這(は)ひまはる小さな虫や、芽を出したばかりの草の葉をよく見る為めに地面に屈み込んだりしてゐます。 一体何を観てゐるのでせう? 何を調べてゐるのでせう?
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