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そしてその流し場に、一塊りの血を吐いていた…… その日の午後、誰にもそのことを知らせずに、私は突然T村を立ち去った。 エピロオグ 地震! それは愛の秩序まで引っくり返すものと見える。 私は寄宿舎から、帽子もかぶらずに、草履のまんま、私の家へ駈(か)けつけた。 私の家はもう焼けていた。 私は私の両親の行方を知りようがなかった。 ことによると其処に立退いているかも知れないと思って、父方の親類のある郊外のY村を指して、避難者の群れにまじりながら、私はいつか裸足になって、歩いて行った。 私はその避難者の群れの中に、はからずもお前たちの一家のものを見出した。 私たちは昂奮して、痛いほど肩を叩(たた)きあった。 お前たちはすっかり歩き疲れていた。 私はすぐ近くのY村まで行けば、一晩位はどうにかなるだろうと云って、お前たちを無理に引張って行った。 Y村では、野原のまん中に、大きな天幕が張られていた。 焚火がたかれていた。 そうして夜更けから、炊き出しがはじまった。 その時分になっても、私の両親はそこへ姿を見せなかった。 しかし私は、そんな周囲の生き生きとした光景のおかげで、まるでお前たちとキャンプ生活でもしているかのように、ひとりでに心が浮き立った。
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