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私は或る日、突然、私のはいることになっている医科を止めて、文科にはいりたいことを母に訴えた。 母はそれを聞きながら、ただ、呆気にとられていた。 それがその秋の最後の日かと思われるような、或る日のことだった。 私は或る友人と学校の裏の細い坂道を上って行った、その時、私は坂の上から、秋の日を浴びながら、二人づれの女学生が下りてくるのを認めた。 私たちは空気のようにすれちがった。 その一人はどうもお前らしかった。 すれちがいざま、私はふとその少女の無雑作に編んだ髪に目をやった。 それが秋の日にかすかに匂った。 私はそのかすかな日の匂いに、いつかの麦藁帽子の匂いを思い出した。 私はひどく息をはずませた。 「どうしたんだい?」 「何、ちょっと知っている人のような気がしたものだから……しかし、矢張り、ちがっていた」 ※ 次ぎの夏休みには、私は、そのすこし前から知合になった、一人の有名な詩人に連れられて、或る高原へ行った。 その高原へ夏ごとに集まってくる避暑客の大部分は、外国人か、上流社会の人達ばかりだった。 ホテルのテラスにはいつも外国人たちが英字新聞を読んだり、チェスをしていた。 落葉松の林の中を歩いていると、突然背後から馬の足音がしたりした。
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