(595字。目安の読了時間:2分)
……そうしてそのために私はへとへとに疲れて、こっそりと泣きながら、出発した。 秋になってから、その青年が突然、私に長い手紙をよこした。 私はその手紙を読みながら、膨れっ面をした。 その手紙の終りの方には、お前が出発するとき、俥(くるま)の上から、彼の方を見つめながら、今にも泣き出しそうな顔をしたことが、まるで田園小説のエピロオグのように書かれてあったから。 しかし、私はその小説の感傷的な主人公たちをこっそり羨しがった。 だが、何んだって彼は私になんかお前への恋を打明けたんだろう? それともそれは私への挑戦状のつもりだったのかしら? そうとすれば、その手紙は確かに効果的だった。 その手紙が私に最後の打撃を与えた。 私は苦しがった。 が、その苦しみが私をたまらなく魅したほど、その時分はまだ私も子供だった。 私は好んでお前を諦めた。 私はその時分から、空腹者のようにがつがつと、詩や小説を読み出した。 私はあらゆるスポオツから遠ざかった。 私は見ちがえるようにメランコリックな少年になった。 私の母が漸くそれを心配しだした。 彼女は私の心の中をそれとなく捜る。 そしてそこに二人の少女の影響を見つける。 が、ああ、母の来るのは何時もあんまり遅すぎる! 私は或る日、突然、私のはいることになっている医科を止めて、文科にはいりたいことを母に訴えた。
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