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気の小さな私はすっかりしょげて、其処から引き返した。 ――私はあとでもって、一人でこっそりと、その井戸端に行ってみた。 そしてそこの隅っこに、私の海水着が丸められたまま、打棄てられてあるのを見た。 私ははっと思った。 いつもなら私の海水着をそこへ置いておくと、兄たちのと一緒に、お前がゆすいで乾して置いてくれるのだ。 そのことでお前はさっきお前の母に叱られていたものと見える。 私はその海水着を、音の立たないように、そっと水をしぼって、いつものように竿(さお)にかけておいた。 翌朝、私はその砂でざらざらする海水着をつけて、何食わぬ顔をしていた。 気のせいか、お前はすこし鬱いでいるように見えた。 とうとう休暇が終った。 私はお前の家族たちと一しょに帰った。 汽車の中には、避暑地がえりの真っ黒な顔をした少女たちが、何人も乗っていた。 お前はその少女たちの一人一人と色の黒さを比較した。 そうしてお前が誰よりも一番色が黒いので、お前は得意そうだった。 私は少しがっかりした。 だが、お前がちょっと斜めに冠っている、赤いさくらんぼの飾りのついたお前の麦藁帽子は、お前のそんな黒いあどけない顔に、大層よく似合っていた。 だから、私はそのことをそんなに悲しみはしなかった。
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