ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2020-07-11

麦藁帽子(11/31)

(563字。目安の読了時間:2分)

それから私は郵便局で、私の母へ宛てて電報を打った。 「ボンボンオクレ」  そうして私は汗だくになって、決勝点に近づくときの選手の真似をして、死にものぐるいの恰好で、ペダルを踏みながら、村に帰ってきた。  それから二三日が過ぎた。 或る日のこと、海岸で、私たちは寝そべりながら、順番に、お互を砂の中に埋めっこしていた。 私の番だった。 私は全身を生埋めにされて、やっと、私の顔だけを、砂の中から出していた。 お前がその細部を仕上げていた。 私はお前のするがままになりながら、さっきから、向うの大きな松の木の下に、私たちの方を見ては、笑いながら話し合っている二人の婦人のいるのを、ぼんやり認めていた。 そのうちの海水帽をかぶった方は、お前の母らしかった。 もう一人の方は、この村では、つい見かけたことのない婦人に見えた。 黒いパラソルをさしていた。 「あら、たっちゃんのお母様だわ」お前は、海水着の砂を払いながら、起き上った。 「ふん……」私は気のなさそうな返事をした。 そうして皆が起き上ったのに、私一人だけ、いつまでも砂の中に埋まっていた。 私は心臓をどきどきさせていた。 私の隠し立てが、今にもばれそうなので。 そうしてそれが、砂の中から浮んでいる私の顔を、とても変梃にさせていそうだった。

========================= ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!  https://bit.ly/3dBk4mc

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/4813_14371.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ■月末まで一時的に配信を停止: https://forms.gle/d2gZZBtbeAEdXySW9


配信元: ブンゴウメール編集部 NOT SO BAD, LLC. Web: https://bungomail.com 配信停止:[unsubscribe]

公式サイト

ブンゴウメール

ブンゴウメール

1日3分のメールでムリせず毎月1冊本が読める、忙しいあなたのための読書サポートサービス

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチは、青空文庫の作品を目安の読了時間で検索できるサービスです。