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沖の方で泳いでいると、水があんまり綺麗なので、私たちの泳いでいる影が、魚のかげと一しょに、水底に映った。 そのおかげで、空にそれとよく似た雲がうかんでいる時は、それもまた、私たちの空にうつる影ではないかとさえ思えてくる。 …… 私たちの田舎ずまいは、一銭銅貨の表と裏とのように、いろんな家畜小屋と脊中合わせだった。 ときどき家畜らが交尾をした。 そのための悲鳴が私たちのところまで聞えてきた。 裏木戸を出ると、そこに小さな牧場があった。 いつも牛の夫婦が草をたべていた。 夕方になると、彼等は何処へともなく姿を消す。 そのあとで、私たちはいつもキャッチボオルをした。 するとお前は、或る時はお前の姉と、或る時はお前の小さな弟と、其処まで遊びに出てきた。 いつだったかのように、遠くで花を摘んだり、お前の習ったばかりの讃美歌を唱ったりしながら。 ときどきお前がつかえると、お前の姉が小声でそれを続けてやった。 ――まだ八つにしかならない、お前の小さな弟は、始終お前のそばに附きっきりだった。 彼は私たちの仲間入りをするには、あんまり小さ過ぎた。 そんな小さな弟に毎日一ぺんずつ接吻をしてやるのが、お前の日課の一つだった。 「今日はまだ一ぺんもしてあげなかったのね……」そう云って、お前はその小さな弟を引きよせて、私たちのいる前で、平気で彼と接吻をする。
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