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……」――私は振りむく。 さっきの少女が、砂の中から半身を出してにっこりと笑っているのが、今度は、私にもよく見える。 「なあんだ、君だったの?」 「おわかりになりませんでしたこと?」 海水着がどうも怪しい。 私がそれ一枚きりになるや否や、私は妖精の仲間入りをする。 私は身軽になって、いままでちっとも見えなかったものが忽(たちま)ち見え出す…… 都会では難しいものに見える愛の方法も、至極簡単なものでいいことを会得させる田舎暮らしよ! 一人の少女の気に入るためには、かの女の家族の様式を呑(の)み込んでしまうが好い。 そしてそれは、お前の家族と一しょに暮らしているおかげで、私には容易だった。 お前の一番気に入っている若者は、お前の兄たちであることを、私は簡単に会得する。 彼等はスポオツが大好きだった。 だから、私も出来るだけ、スポオティヴになろうとした。 それから彼等は、お前に親密で、同時に意地悪だった。 私も彼等に見習って、お前をば、あらゆる遊戯からボイコットした。 お前がお前の小さな弟と、波打ちぎわで遊び戯れている間、私はお前の気に入りたいために、お前の兄たちとばかり、沖の方で泳いでいた。 沖の方で泳いでいると、水があんまり綺麗なので、私たちの泳いでいる影が、魚のかげと一しょに、水底に映った。
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