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2020-07-04

麦藁帽子(4/31)

(552字。目安の読了時間:2分)

 私は海岸へ行く道順を教わると、すぐ裸足になって、松林の中の、その小径を飛んで行った。 焼けた砂が、まるでパンの焦げるような好い匂いがした。  海岸には、光線がぎっしりと充填って、まぶしくって、何にも見えない位だった。 そしてその光線の中へは、一種の妖精にでもならなければ、這入れないように見えた。 私は盲のように、手さぐりしながら、その中へおずおずと、足を踏み入れていった。  小さな子供たちがせっせと砂の中に生埋めにしている、一人の半裸体の少女が、ぼんやり私の目にはいる。 お前かしらと思って、私は近づきかける。 ……すると大きな海水帽のかげから、私の見知らない、黒い、小さな顔が、ちらりとこちらを覗(のぞ)く。 そしてまた知らん顔をして、元のように、すっぽりとその小さな顔を海水帽の中に埋める。 ……それが私の足を動けなくさせる。  私は流砂に足をとられながら、海の方へ出たらめに叫ぶ。 「ハロオ!」……と、まぶしくて私にはちっとも見えない、その海の中から、それに応えて、「ハロオ! ハロオ!」  私はいそいで着物をぬぐ。 そして海水着だけになって、盲のように、その声のする方へ、飛び込もうと身構える。  その瞬間、私のすぐ足許からも、「ハロオ!……」――私は振りむく。

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