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真っ白な運動服を着た、二人とも私よりすこし年上の、お前の兄たちの姿が、先ず浮ぶ。 毎日のように、私は彼等とベエスボオルの練習をした。 或る日、私は田圃に落ちた。 花環を手にしていたお前の傍で、私は裸かにさせられた。 私は真っ赤になった。 ……やがて彼等は、二人とも地方の高等学校へ行ってしまった。 もうかれこれ三四年になる。 それからはあんまり彼等とも遊ぶ機会がなくなった。 その間、私はお前とだけは、屡々(しばしば)、町の中ですれちがった。 何にも口をきかないで、ただ顔を赧(あか)らめながら、お時宜をしあった。 お前は女学校の制服をつけていた。 すれちがいざま、お前の小さな靴の鳴るのを私は聞いた…… 私はその海岸行を両親にせがんだ。 そしてやっと一週間の逗留を許された。 私は海水着やグロオブで一ぱいになったバスケットを重そうにぶらさげて、心臓をどきどきさせながら、出発した。 それはT……という名のごく小さな村だった。 お前たちは或る農家の、ささやかな、いろいろな草花で縁をとられた離れを借りて、暮らしていた。 私が到着したとき、お前たちは海岸に行っていた。 あとにはお前の母と私のあまりよく知らないお前の姉とが、二人きりで、留守番をしていた。 私は海岸へ行く道順を教わると、すぐ裸足になって、松林の中の、その小径を飛んで行った。
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