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私は十五だった。 そしてお前は十三だった。 私はお前の兄たちと、苜宿の白い花の密生した原っぱで、ベエスボオルの練習をしていた。 お前は、その小さな弟と一しょに、遠くの方で、私たちの練習を見ていた。 その白い花を摘んでは、それで花環をつくりながら。 飛球があがる。 私は一所懸命に走る。 球がグロオブに触る。 足が滑る。 私の体がもんどり打って、原っぱから、田圃の中へ墜落する。 私はどぶ鼠(ねずみ)になる。 私は近所の農家の井戸端に連れられて行く。 私はそこで素っ裸かになる。 お前の名が呼ばれる。 お前は両手で大事そうに花環をささげながら、駈(か)けつけてくる。 素っ裸かになることは、何んと物の見方を一変させるのだ! いままで小娘だとばかり思っていたお前が、突然、一人前の娘となって私の眼の前にあらわれる。 素っ裸かの私は、急にまごまごして、やっと私のグロオブで私の性をかくしている。 其処に、羞しそうな私とお前を、二人だけ残して、みんなはまたボオルの練習をしに行ってしまう。 そして、私のためにお前が泥だらけになったズボンを洗濯してくれている間、私はてれかくしに、わざと道化けて、お前のために持ってやっている花環を、私の帽子の代りに、かぶって見せたりする。
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