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クリストフの祖父と父は、彼を嘲りぎみに軽蔑していた。
そのちっぽけな男がおかしく思われたし、行商人という賤(いや)しい身分に自尊心を傷つけられるのだった。
彼等はそのことをあからさまに見せつけたが、彼は気づかない様子で、彼等に深い敬意をしめしていた。
そのため、二人の気持はいくらか和いだ。
ひとから尊敬されるとそれに感じ易い老人の方は、殊にそうだった。
二人はルイザがそばで顔を真赤にするほどひどい常談を浴せかけて、それで満足した。
ルイザはクラフト家の人たちの優れていることを文句なしにいつも認めていたから、夫と舅(しゅうと)が間違っているなどとは夢にも思っていなかった。
しかし、彼女は兄をやさしく愛していたし、兄も口には出さないが彼女を大切にしていた。
彼等は二人きりでほかに身寄の者もなかった。
二人とも生活のためにひどく苦労して、やつれはてていた。
人知れず忍んできた同じような苦しみとお互の憐(あわ)れみの気持とが、悲しいやさしみをもって二人を結びつけていた。
生きるように、楽しく生きるように頑固に出来上ってる、丈夫な騒々しい荒っぽいクラフト家の人たちの間にあって、いわば人生の外側か端っこにうち捨てられてるこの弱い善良な二人は、今までお互に一言も口には出さなかったが、互に理解しあい憐(あわ)れみあっていた。
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