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すると小父はまっさきに笑いだし、されるままになって少しも怒らなかった。
彼はちっぽけな行商人だった。
香料、紙類、砂糖菓子、ハンケチ、襟巻、履物、缶詰、暦、小唄集、薬類など、いろんなもののはいってる大きな梱(こり)を背負って、村から村へと渡り歩いていた。
家の人たちは何度も、雑貨屋や小間物屋などの小さな店を買ってやって、そこにおちつくようにすすめたことがあった。
しかし彼は腰をすえることが出来なかった。
夜中に起上って、戸の下に鍵をおき、梱(こり)をかついで出ていってしまうのだった。
そして幾月も姿を見せなかった。
それからまた戻ってきた。
夕方、誰かが戸にさわる音がする。
そして戸が少しあいて、行儀よく帽子をとった小さな禿頭が、人のいい目つきとおずおずした微笑と共にあらわれるのだった。
「皆さん、今晩は。」と彼はいった。
はいる前によく靴をふき、みんなに一人一人年の順に挨拶をし、それから部屋のいちばん末座にいって坐った。
そこで彼はパイプに火をつけ、背をかがめて、いつものひどい悪洒落がすむのを、静かに待つのであった。
クリストフの祖父と父は、彼を嘲りぎみに軽蔑していた。
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