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…って、一家の光栄、芸術の光栄、祖国の光栄となった時、お前が有名になった時、その時になって、思い出してくれるだろうね、お前を最初に見出し、お前の将来を予言したのは、この年とったお祖父さんだったということをね……」
その日以来、クリストフはもう作曲家になったのだったから、作曲にとりかかった。
まだ字を書くことさえよく出来ないうちから、家計簿の紙をちぎりとっては、いろいろな音符を一生懸命書きちらした。
けれども、自分がどんなことを考えているかそれを知るために、そしてそれをはっきり書きあらわすために、あまり骨折っていたので、ついには、何か考えてみようとするだけで、もう何も考えなくなってしまった。
それでも彼は、やはり楽句(楽曲の一節)を組みたてようとりきんでいた。
そして音楽の天分がゆたかだったので、まだ何の意味も持たないものではあったけれど、ともかくも楽句をこしらえ上げることができた。
すると彼は喜び勇んで、それを祖父のところへ持っていった。
祖父は嬉(うれ)し涙をながし――彼はもう年をとっていたので涙もろかった――そして、素晴らしいものだといってくれた。
そんなふうに、彼はすっかり甘やかされてだめになるところだった。
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