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その半ば夢心地の状態にあきてくると、彼は動きまわって音をたてたくてたまらなくなった。
そういう時には、楽曲を作り出して、それをあらん限りの声で歌った。
自分の生活のいろんな場合にあてはまる音楽をそれぞれこしらえていた。
朝、家鴨の子のように盥(たらい)の中をかきまわす時の音楽もあったし、ピアノの前の腰掛に上って、いやな稽古をする時の音楽も――またその腰掛から下る時の特別な音楽もあった。
(この時の音楽はひときわ輝かしいものだった。)それから、母が食卓に食物を運ぶ時の音楽もあった――その時、彼は喇叭(らっぱ)の音で彼女をせきたてるのだった。
――食堂から寝室に厳かにやっていく時には、元気のいい行進曲を奏した。
時によっては、二人の弟といっしょに行列をつくった。
三人は順々にならんで、威ばってねり歩き、めいめい自分の行進曲をもっていた。
もちろん、いちばん立派なのがクリストフのものだった。
そういう多くの音楽は、みなぴったりとそれぞれの場合にあてはまっていた。
クリストフは決してそれを混同したりしなかった。
ほかの人なら誰だって、まちがえるかも知れなかった。
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