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源吉とやら、みずからは、とあの姫様が、言いそうもないからね」
「罰があたらあ、あてこともない」
「でも、あなたやあ、ときたらどうする」
「正直なところ、わっしは遁(に)げるよ」
「足下もか」
「え、君は」
「私も遁げるよ」と目を合わせつ。
しばらく言途絶えたり。
「高峰、ちっと歩こうか」
予は高峰とともに立ち上がりて、遠くかの壮佼を離れしとき、高峰はさも感じたる面色にて、
「ああ、真の美の人を動かすことあのとおりさ、君はお手のものだ、勉強したまえ」
予は画師たるがゆえに動かされぬ。
行くこと数百歩、あの樟(くす)の大樹の鬱蓊たる木の下蔭の、やや薄暗きあたりを行く藤色の衣の端を遠くよりちらとぞ見たる。
園を出ずれば丈高く肥えたる馬二頭立ちて、磨りガラス入りたる馬車に、三個の馬丁休らいたりき。
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